2010/07/20

私の好きな歌

今回のMJは「好きな歌」を描く課題でした。私が選んだのは、李香蘭の「夜来香」です。この歌のメロディはとても美しいです。そこから伝わるロマンティックな雰囲気も、ムーディーで好みです。


「あわれ春風に 嘆く鶯よ 月に切なくも 匂う夜来香」


本当は「蘇州夜曲」も良いなと思っていたのですが、絵にするのは難しいと思ってこちらにしました。しかし授業に参加したら、正一さんが見事にこの歌を描いていて、またしばし歌の世界に耽溺させていただきました。
蘇州夜曲は、歌詞も好みです。「君がみ胸に 抱かれて聞くは」からはじまる詩の世界は、とことんロマンティックで、聞いていると自分が主人公になったかのような儚い淡い幻想を抱かせてくれます。それが夢であり、消えていくのが分かっているゆえの憐れさであり、美しさです。

2010/07/10

ドイツの画家アルブレヒト・デューラーの「犀」。この作品は、本物の犀を見ずして描いた傑作であり、その創造性が魅力の木版画。似ているとか似ていないとか、そういう判断は無粋な作品。ヨーロッパでは、18世紀になった時でも、この絵は本物の犀を描写していると信じられていたそうです。



昔、動物園で犀を見た時、その皮膚に驚いたことがある。黒光りしたそれは、不思議と生気を感じさせないものだった。まるで彫刻のような美しさ。

2010/06/06

森下にて、イラストレーションとは何かを考える

今日のMJは合同授業でした。イラストレーターの都築潤氏をお迎えしての、題して「日本イラストレーション史」。

「イラストレーションとはなによ」のような話をしていると、「じゃあアートとイラストレーションの違いってなによ」とかそういう話になることが多かったのですが、この授業に参加して、イラストレーションとは一言、メディアなのだと思いました。メディアになったもの、またそこを目的としたものがイラストレーションであり、アートだとかイラストレーションだとかの理由は後付けなのではないかと。
それゆえに、メディア足りうるものを作ることが大事なのではないでしょうか。人に見られることを大前提としているのですね。

少し話はそれますが、先日村上春樹のエッセイを古本屋で購入しまして、その表紙はいつののごとく安西水丸さんが描かれているのですが、その絵をまじまじ見つめると、色が点の集合なんです。すっごくあたりまえだけど、印刷物なのです。で、その点の集合があの軽妙洒脱な味わい深い作品になっていて、その本のもつ雰囲気を伝えるのです。これがイラストレーションなのだなと思いました。

なんだかよく分からない話になってしまったけれど、とにかくマスコミュニケーションできる作品を描いていきたいなと思いました。

2010/05/10

2色の春

4月14日のMJの課題は「春(2色)」でした。2色と白だけで、春を描くというものです。この2色だけというのが、想像以上にすごく難しかったです。春という課題を2色でどう見せるのか、それ自体が難しかった。

私が描いたモチーフは、花や蝶。「春」といって、こういったイメージがまず沸いてしまうのはなんだか貧困な気がします。いろいろな春があるのに、それを思ったように描けない非力を思い知ります。

2010/05/03

いのくまさん

GWは、初台のオペラシティで開催中の「猪熊弦一郎展 いのくまさん」を見にいきました。
この親しみやすさの正体はなんなのか?高尚な芸術観などもってなくてもいい、無理やりアホにもバカにも子供にもならなくていい、そんな自然体がとにかく楽しい展示。

対象にとことん向き合い真摯に描く猪熊さんは、とても実直な画家だったのだと思った。その誠実さは、こうして見る者を楽しい気持ちにさせてくれます。スターウォーズが好きだからと、宇宙の絵をたくさん描いてしまう猪熊さんって、なんて実直なのだろう。

2010/04/04

飯野和好さん

このたびのMJ合同授業は、絵本作家でありイラストレーターでいらっしゃる飯野和好さんをお迎えしてのものでした。
講義というよりショーに近いスタイルで進むこの授業、とても面白かったです。飯野さんのお話を聞いて、本当のおしゃれってこういうものなのでは、と思いました!ほんと贅沢な時間を過ごさせていただきました。

なかでも印象的だったのは「津軽海峡冬景色」の歌の話で、「上野発の夜行列車降りたときから、青森駅は雪の中って、この一文で一気に青森駅にまで行っちゃうんだからスゴイ」というもの。確かにこれを聞く人は、この歌詞の始まり20音足らずのうちに、一気に青森駅まで行けますし、そこが雪の中だというのも簡単にイメージできちゃいます。
これって、すなわちイラストレーション的ではと思いました。物語やシチュエーションのニュアンスを見事に浮き彫りにする言葉です。
それに、旅ってこういうものだと思いました。観光地に行ってピースサインをしたりご当地グルメを食べたりすることだけでなく、この移動する感覚そのものが旅なのではないかと。だったら、東京都内の満員電車で小説を読むことだって、正真正銘の旅です。人間の言葉を生み出す力や、それを想像する力ってすごい。

飯野さんは、俳句を絵の入り込む隙のないものだとも仰ってましたが、本当にそのとおりで、「古池や蛙飛び込む水の音」に、並大抵の絵を添えても状況の説明にしかならないような気もします。それに、どういう絵を添えるか、そのあたりはセンス以外のなにものでもない、非常に高度なコミュニケーション力が問われるのではと。

股旅姿で読み語りをして下さる飯野さんは、冗談めいた笑い溢れるお話のなかに、真摯で厳しいイラストレーションへの眼差しを垣間見せてくれて、身の引き締まる心地よい思いが出来ました。

2010/02/08

DOGU展

上野の国立博物館で開催中の、「国宝 土偶展」へ行ってきました。

何千年も前のこの造形物は、プリミティヴな解放感に溢れており、見ているだけで笑顔になれる。と、同時に今の自分には絶対に到達できない境地でもあると思うと、失ってきたものの大きさに悲しくもなります。

特に縄文のビーナスと謳われている土偶が好み。曲線美とは女性美で、まさに豊穣の喜び。この時代に生きた人の人間観が伝わってくるようで、時空を超えてそれを共有できているとしたら、それは素晴らしいことだと思いました。

2010/01/04

2010年 あけましておめでとうございます


新年というものを迎えて、早30回以上がたちます。元旦、テレビの中はドンチャン騒ぎ。着物姿のタレントたちが、明るい笑顔で大声でおしゃべりしています。新年を前に収録したのでしょうか。季節感とは演出するものなのでしょう。
一方、田舎暮らしの私にとって、新年は静かなものです。車の音も控えめで、特別なことは起こりません。ただお節を食べて、年賀状に目を通す一日です。

年賀状をいただくのは大変うれしいです。昨年のさまざまな交流が思い出されるからです。そして、今年も仲良くしていけるのだと思うと、またうれしいです。年賀状を送ってくださった皆様、ありがとうございます。