2010/04/04

飯野和好さん

このたびのMJ合同授業は、絵本作家でありイラストレーターでいらっしゃる飯野和好さんをお迎えしてのものでした。
講義というよりショーに近いスタイルで進むこの授業、とても面白かったです。飯野さんのお話を聞いて、本当のおしゃれってこういうものなのでは、と思いました!ほんと贅沢な時間を過ごさせていただきました。

なかでも印象的だったのは「津軽海峡冬景色」の歌の話で、「上野発の夜行列車降りたときから、青森駅は雪の中って、この一文で一気に青森駅にまで行っちゃうんだからスゴイ」というもの。確かにこれを聞く人は、この歌詞の始まり20音足らずのうちに、一気に青森駅まで行けますし、そこが雪の中だというのも簡単にイメージできちゃいます。
これって、すなわちイラストレーション的ではと思いました。物語やシチュエーションのニュアンスを見事に浮き彫りにする言葉です。
それに、旅ってこういうものだと思いました。観光地に行ってピースサインをしたりご当地グルメを食べたりすることだけでなく、この移動する感覚そのものが旅なのではないかと。だったら、東京都内の満員電車で小説を読むことだって、正真正銘の旅です。人間の言葉を生み出す力や、それを想像する力ってすごい。

飯野さんは、俳句を絵の入り込む隙のないものだとも仰ってましたが、本当にそのとおりで、「古池や蛙飛び込む水の音」に、並大抵の絵を添えても状況の説明にしかならないような気もします。それに、どういう絵を添えるか、そのあたりはセンス以外のなにものでもない、非常に高度なコミュニケーション力が問われるのではと。

股旅姿で読み語りをして下さる飯野さんは、冗談めいた笑い溢れるお話のなかに、真摯で厳しいイラストレーションへの眼差しを垣間見せてくれて、身の引き締まる心地よい思いが出来ました。